臨床工学技士が医療機器営業へ転職|働き方・年収・商社との違い

メーカーの営業って年収は上がるらしいけど、実際どんな働き方なんだろう?
臨床工学技士(CE)が病院の外に出る選択肢として、最初に浮かぶのが医療機器メーカーの営業です。
年収レンジは病院勤務より高い。CEの知識も活かせます。ただ「年収が高いから」で飛び込むと、働き方のギャップに苦しむことになります。
僕は日常業務で医療機器メーカーの営業と接点があります。立ち会いや納品で顔を合わせ、雑談もする。この記事では、隣で見てきたCEの目線と直接聞いた話をもとに、メーカー営業という仕事の実際を書く。
結論:年収は上がる。ただし「働き方が根本的に変わる」
先に結論から。
CEからメーカー営業への転職は、年収を上げる有効な選択肢です。ただし臨床の現場を離れて営業職になるという意味で、仕事の性質そのものが変わります。
- 向いている人:年収を優先したい/人と話すのが苦にならない/病院の外を見たい
- 向かない人:臨床業務そのものが好き/数字に追われたくない/転勤が難しい
医療機器メーカー営業の仕事内容と働き方
外から見ていて分かるのは、移動と対人業務が中心だということです。
CEの働き方が「院内で完結し、機器と向き合う」ものだとすれば、営業は「1日のほとんどを外で過ごし、人と向き合う」働き方になります。ここが最大の違いです。
担当の営業さんは、朝いちばんに顔を出して、夕方にもう一度戻ってくることがあります。話を聞くと、その間に別の病院を何件か回っているらしい。院内で話している最中にも携帯が鳴って、断ってから席を外す場面をよく見る。同じ「病院に出入りする仕事」でも、こちらが一つの現場に留まるのに対して、営業は一日中動き続けています。
病院への立ち会い
新しい機器の導入時やトラブル時には、営業が現場に立ち会う。臨床のスケジュールが優先されるため、営業側が病院の都合に合わせる場面も多い。
朝の透析開始前や、手術の時間帯に合わせて来ることもあります。時間の自由が利くように見えて、実際は現場のスケジュールに縛られる側面もあります。
機器の入れ替えのとき、始業前の時間に合わせて来てもらったこともあります。こちらの業務が始まれば臨床が最優先になるので、営業は待ち時間のあいだ廊下で資料を広げていた。トラブル対応で呼んだときも、原因が切り分けられるまで結局その場に居続けることになります。拘束時間が読めない仕事だな、と横から見ていて思います。また、そのあとに別の病院へ向かわなければいけないこともあります。

外回りって自由そうに見えてたけど、そうでもないんだ

そう。外から見ているだけでも、拘束時間が読めないのは大変そうだなと思う。
年収の目安
年収レンジは職場のタイプで大きく変わります。
| 職場 | 年収目安 |
|---|---|
| 医療機器メーカー | 500〜800万円 |
| 治験関連企業(CRO・SMO) | 450〜700万円 |
| 病院勤務のCE(平均) | 約430万円 |
※CEの平均年収は厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」より。
病院勤務のCEと比べると上振れしやすいが、注意点があります。求人票の年収は「固定給+固定残業」の合算で提示されることが多いという点です。
固定残業代が含まれていれば、その時間分の残業をこなして初めて提示額に届く。応募時には「固定給がいくらか」「固定残業は何時間分か」を必ず確認したい。
年齢が近い営業の人に聞いたときも、転職しただけで年収が上がったと言っていた。
CE側の年収相場は臨床工学技士の平均年収に詳しくまとめています。
メーカーだけじゃない|医療商社・卸という選択肢
医療機器の営業と聞くとメーカーを思い浮かべがちだが、実際に病院へ出入りしている営業の多くは医療商社(ディーラー・卸)の所属です。
メーカーが自社製品を作って供給する側なら、商社は複数メーカーの製品を病院に届ける側になります。たとえば九州であればアステムのような総合医療商社があり、医薬品から医療機器まで幅広く扱っています。
メーカーと商社の違い
| メーカー | 医療商社・卸 | |
|---|---|---|
| 扱う製品 | 自社製品のみ | 複数メーカーの製品 |
| 求められる知識 | 自社製品への深い理解 | 幅広い製品知識と提案力 |
| 顧客との距離 | 商社経由が多い | 病院と日常的に接する |
| 求人数 | 少なめ・専門性重視 | 比較的多い |
CEにとって入りやすいのは商社のほうかもしれません。日常的に病院を回るため現場感覚が活き、扱う製品の幅が広いぶん、特定メーカーの経験がなくても採用されやすい傾向があります。
一方で、ディーラーは複数メーカーの製品を覚える必要があり、価格競争にさらされやすいという面もあります。
医療商社・卸の求人は、リクルートエージェントやdodaといった総合型の転職サービスで扱われています。実際に転職活動をしていたとき、企業名で検索すれば出てきた。病院との違いは年収にあらかじめ固定残業代が含まれていることだと感じた。
CEの知識はどこで活きるか
ここはCEにとって明確な強みになる部分です。
機器の構造や原理を理解しているため、現場から出る質問に自分の言葉で答えられます。臨床側の業務フローも分かっているので、「その提案は現場では回らない」という判断もできます。
実際、医療機器の営業には臨床出身者が一定数います。製品を語れる営業は、現場からの信頼を得やすい。
雑談のなかで前職を聞いてみると、臨床出身だという人に何度か出会ったことがあります。話していて分かるのは、説明の解像度が違うということです。現場の手順を踏まえた前提で話が進むので、こちらが補足する必要がありません。逆に完全な営業畑の人だと、カタログの範囲を超えた質問は「持ち帰ります」になることが多い。
ただし、価格交渉や数字の管理といった営業スキルは、入ってから覚える領域になるそうです。
覚悟しておきたい3つのこと
1. 数字を追う仕事になる
営業である以上、目標数字があります。臨床のように「目の前の患者さんのために」ではなく、「今期の数字のために」動く場面が出てきます。ここを割り切れるかどうかは大きい。
2. 出張・転勤の可能性
担当エリアが変われば転居を伴うこともあります。家庭の事情がある人は、応募前に転勤の有無を確認しておきたい。
担当が変わる、という連絡は実際に何度か受けています。異動の話を聞くと、職場にもよるが、エリアごと入れ替わる形になるようで、本人の希望だけで決まるものではなさそうでした。長く同じ病院を担当し続けられるとは限らない、というのは前提にしておいたほうがいい。
外資系のメーカーへ行った人は、年収がかなり上がったが激務だという話も聞いた。遠方へも朝から向かい、残業も当たり前の環境らしい。
3. 臨床から離れる不可逆性
これが最も見落とされやすい。数年営業をやった後に臨床へ戻るのは簡単ではありません。技術は使わなければ鈍るし、ブランクは選考でも見られます。
離れている年数にもよるし、メーカーや異業種から現場へ戻った人がいるという話も、何度か聞いたことがあります。ただ、「合わなければ戻ればいい」と軽く考えるのは危険です。片道切符に近いという前提で判断したほうがいい。

戻れないわけじゃないけど、簡単でもないってことか

うん。戻る前提じゃなくて、営業で続けられるかどうかで決めたほうがいいと思う。
CEから営業へ転職するには
未経験から医療機器営業に入るルートは主に2つ。
- 医療機器メーカーの営業職に直接応募する
- 転職エージェント経由で、臨床出身者を歓迎する企業求人を探す
企業求人は病院求人と違って募集時期が限られます。営業未経験でも臨床出身であること自体が評価されるが、求人が出たタイミングを逃さないことが重要になるので、先に登録して市場を見ておくと動きやすい。
転職と転職活動は別物です。まず情報を持つだけならリスクはありません。
まずは自分の市場価値を知るところから始めてほしい。
まとめ
- 年収は上がりやすい。ただし求人票は「固定給がいくらか」で見る
- 働き方は移動と対人が中心。時間は現場のスケジュールに左右される
- CEの知識は強みになるが、臨床から離れる不可逆性は覚悟がいる
医療機器メーカーの営業は、CEの知識を活かして年収を上げられる現実的な選択肢です。一方で、数字を追う働き方と、臨床から離れる不可逆性があります。
「年収が高いから」ではなく、働き方が自分に合うかで判断してほしい。
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