臨床工学技士1年目がつらいのは当たり前|5年目の現役CEが振り返る乗り越え方

1年目、まだ半年も経っていないのに、もう辞めたい…。こんなふうに思うのは僕だけなのかな
臨床工学技士1年目がつらい。僕もそうでした。CEとして働き始めた最初の1年は、正直に言うと本当にきつかったです。
今は5年目になりましたが、振り返ってみると、あのときのつらさにはちゃんと理由がありました。そして、いつごろから楽になったのかも、はっきり覚えています。
今つらい思いをしている1年目の方に向けて、当時の自分が何を感じていたか、どうやって抜けたのかを書きます。あわせて、1年目で必ず頭をよぎる「転職」について、動くなら何年目がいいのか、新卒カードを手放すとどうなるのかも、データを見ながら整理しました。
結論:臨床工学技士1年目がつらいのには構造的な理由がある
- 臨床工学技士1年目がつらいのは、能力の問題ではない
- 覚える量・責任・聞きづらさ・給与が、同じ時期にまとめて来る
- 大卒の3人に1人(33.8%)は3年以内に辞めている。珍しいことではない
先に言っておきたいのは、1年目がつらいのは能力の問題ではないということです。CEという職種の構造上、最初の1年は誰でもきつくなります。
- 覚える機器の数が多すぎる:透析装置、人工心肺、人工呼吸器、ペースメーカー。分野ごとに別物
- 失敗が患者さんに直結する:機器のミスが命に関わるという緊張感
- 質問しづらい空気がある:忙しい先輩に、どこまで聞いていいか分からない
- 給料が低い:20代の平均年収は約352万円(令和5年賃金構造基本統計調査)。責任の重さと釣り合わない感覚
この4つが同時に来るのが1年目です。つらくならないほうがおかしいと思います。
実際、厚生労働省の調査では、大学を出て就職した人の33.8%が3年以内に離職しています(令和4年3月卒業者)。産業別に見ると「医療,福祉」は40.8%で、全体より高い水準です。つらいと感じているのは、あなたひとりではありません。
実際に1年目で何がつらかったか
オリエンテーションの段階で、もう辞めたくなった
正直に書くと、僕が最初に「辞めたい」と思ったのは、現場に出るより前、オリエンテーションの段階でした。
まだ患者さんを受け持ってもいないし、機器を一人で触ってもいません。それなのに、ここでやっていける気がしませんでした。同期は普通に話を聞いているように見えるのに、自分だけが置いていかれている感覚がありました。
あとから聞くと、同期も同じことを思っていたそうです。口に出していないだけでした。
つらさの正体は、環境の落差だった
今になって振り返ると、あれは仕事の中身がつらかったというより、大学生活というぬるい環境から、社会という厳しい環境へ一気に移ったことが原因だったと思います。
大学までは、多少サボっても困るのは自分だけでした。課題の期限も、勉強のペースも、自分の裁量です。失敗しても成績が下がるだけで済みます。
社会人になった瞬間、それが全部ひっくり返ります。自分のペースは存在しないし、分からないことを聞くだけで先輩の時間を使う。そしてミスの行き先が、成績ではなく患者さんになります。
この落差を、入職して数日で越えろと言われているようなものです。心が追いつかないのは当然でした。1年目のつらさを「自分の性格が弱いから」と結論づける必要はまったくありません。
現場に出てからは、別の種類のつらさが来る
- 覚える量が終わらない:装置の操作、アラームの意味、消耗品の名前、記録の書き方。ひとつ覚えると次が来ます
- できない自分を毎日見せられる:先輩が3分で終える手技に、自分は15分かかる。それが毎日続きます
- 緊張が抜けない:穿刺もアラーム対応も、失敗の想像が先に立ちます
- 相談先が分からない:忙しそうな先輩にどこまで聞いていいのか、その線引き自体が分かりません
この時期に「向いていないのかも」と思うのは、順番として自然です。できないのではなく、まだ経験していないだけなのですが、渦中にいるとその区別がつきません。

先輩はみんな普通にこなしてるように見えるんだよな…

あの人たちも1年目は同じだったよ。見えてるのは、5年分の差だけ
データで見る:1年目で辞めたくなるのは普通のこと
気持ちの話だけだと「自分が甘いのでは」と思ってしまうので、数字も置いておきます。厚生労働省が令和7年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者)では、大学を出た人の3年以内離職率は33.8%でした。事業所の規模別に見ると、差がはっきり出ています。
| 事業所の規模 | 大卒の3年以内離職率 |
|---|---|
| 5人未満 | 57.5% |
| 5〜29人 | 52.0% |
| 30〜99人 | 41.9% |
| 100〜499人 | 33.9% |
| 1,000人以上 | 27.0% |
およそ3人に1人が3年以内に辞めています。しかも規模が小さい職場ほど離職率は高いという傾向がはっきり出ていて、30〜99人の事業所では41.9%、5人未満では57.5%です。小規模なクリニックや施設で「同期がいない」「教育係が決まっていない」といった環境なら、しんどさが増すのは統計的にも自然なことです。
つまり、今あなたが感じているつらさは個人の弱さではなく、多くの人が最初の数年でぶつかる壁です。
いつ楽になったか
読者が一番知りたいのは「このつらさがいつまで続くのか」だと思います。僕の実感と、周りのCEを見てきた範囲でまとめると、楽になり方は段階的です。
- 最初の3か月:いちばん苦しい時期。一日を終えること自体が仕事です
- 半年ごろ:手順が体に入り始めます。まだ余裕はありませんが、朝に絶望しなくなります
- 1年前後:一通りの業務が回るようになります。イレギュラーが来るとまだ固まります
- 2年目以降:先を読めるようになり、「なぜこの操作をするのか」が分かってきます。ここで仕事が面白くなり始めます
共通しているのは、ある日いきなり楽になるのではなく、つらい日の割合がじわじわ減っていくということです。「まだ全然慣れない」と感じていても、3か月前の自分と比べれば確実に進んでいます。比較する相手は先輩ではなく、昨日の自分にしてください。
僕が「慣れた」と感じたのは、業務を独り立ちしたときでした。穿刺や呼吸器の操作は、入職してすぐに一人でやらせてもらえるものではありません。できるようになるまでは、常に先輩と一緒に動くことになります。
独り立ちしたあと、病棟の看護師さんに呼ばれて、機械のトラブルを一人で解決できた日のことは今でも覚えています。あのとき初めて「慣れた」と感じました。
1年目で辞めるべきか、続けるべきか
「もう辞めたい」と思っている人もいると思うので、正直に書きます。
辞めたほうがいいケース
- 心身に不調が出ている(眠れない、食べられない)
- パワハラなど、環境そのものに問題がある
- 仕事内容が根本的に合わないと確信している
続けたほうがいいケース
- 単に「まだ慣れていない」だけ
- できないことが多くて自信をなくしている
- 特定の先輩との関係だけが問題
後者であれば、時間が解決する可能性が高いです。1年目は誰でもできません。
逆に前者、とくに眠れない・食べられないという体のサインが出ているときは、年数の話はいったん忘れてください。キャリアは体があってこそです。この記事の後半で「何年目がいいか」を書きますが、それは健康な状態での話です。
僕はどうしたか
僕は辞めたくなりましたが、結果的に1年目では動きませんでした。代わりに考えたのが、「辞めるとしても、次の職場で戦えるようになってからにしよう」ということです。
そこから転職を意識して、2年ほどスキルの習得に振り切りました。結果としてこれが正解でした。理由は、このあとのデータで説明します。
1年目で転職を考えたくなるのは、自然なこと
1年目で「転職」の二文字が頭に浮かぶのは、逃げでも甘えでもありません。むしろ、今の環境を客観視しようとしている証拠です。
ただ、ここで大事なのは「考えること」と「動くこと」を分けることです。求人を眺める、給与相場を調べる、他院の教育体制を知る。これは今日やっていいことです。一方で、応募して内定を取り、辞表を出すのは別の話です。
辞めたくなったときは、原因を3つに分けてみてください。
- 職場の問題:人間関係、教育体制、シフト、給与。これは職場を変えれば解決します
- 職種の問題:CEという仕事そのものが合わない。これは職場を変えても付いてきます
- 慣れの問題:まだ技術も知識も足りないだけ。これは時間で解決します
1年目に感じるつらさの多くは、3つ目の「慣れの問題」です。ここを見誤って職場を変えると、次の職場でも同じ壁にぶつかります。実際、転職で失敗する人にはいくつか共通点があります(臨床工学技士の転職で失敗する人の5つの特徴でまとめています)。

転職を考えるのって、逃げなのかな

考えるのは自由だよ。調べるのと辞表を出すのは、別の話にしていい
転職するなら何年目がいいのか
- 体調と環境に問題がなければ、動くなら3年目前後がひとつの目安
- 1年目の転職はポテンシャル採用。受け入れ先はあるが条件は上がりにくい
- 心身の不調やハラスメントがあるなら、年数は関係なく離脱が優先
結論から言うと、CEとしてのキャリアを続けるなら3年目前後がひとつの目安です。体調や環境に問題がないことが前提ですが、理由は採用する側の見方にあります。
| 時期 | 見られ方 | 現実的なところ |
|---|---|---|
| 1年目 | ほぼポテンシャル採用 | 受け入れ先はあるが、条件は上がりにくい。早期離職の理由を必ず聞かれる |
| 2〜3年目 | 第二新卒+実務が少しある | 伸びしろと現場経験の両方を評価される。動きやすい時期 |
| 4年目以降 | 即戦力 | 「何ができるか」で評価される。条件交渉もしやすい |
いわゆる第二新卒は、新卒入社から1〜3年ほどで転職する人を指すのが一般的です。統一された定義はありませんが、この層は「経験」よりも「入社後に伸びるかどうか」で見られる傾向があります。裏を返すと、経験のある応募者と並んだときはスキルで比較されて不利になります。
1年目と3年目の差は、履歴書の1行ではなく面接で話せる中身に出ます。穿刺や返血をどれくらい任されていたか、装置のアラームにどう対応してきたか、機器管理をどこまで担当したか。3年目なら具体例で答えられますが、1年目だとまだ材料がありません。
もちろん例外はあります。心身に不調が出ている場合や、ハラスメントがある場合は、年数を待つ理由はありません。その場合は「キャリアの最適解」ではなく「離脱」を優先してください。
新卒カードは一度しか使えない
1年目で辞めるかどうかを考えるとき、意外と軽く見られているのがこれです。
新卒採用の枠は、「何もできない前提」で採ってもらえる唯一の枠です。研修があり、教育担当が付き、できないことを前提にスケジュールが組まれています。同期がいるのも新卒だけの特権です。
一方、中途採用は基本的に欠員補充です。誰かが抜けた穴を埋めるために募集しているので、採用する側は「明日から少しでも回せる人」を探しています。手厚い研修を用意している施設もありますが、新卒の枠と同じだけの時間を割いてもらえることは、まずありません。
つまり新卒カードを1年目で手放すと、「教えてもらえる立場」から「できる前提で見られる立場」へ、準備なしで移動することになります。これが1年目の転職がしんどくなりやすい理由です。
もちろん、新卒カードを使い切ること自体が目的ではありません。合わない環境に耐えることが正解でもありません。ただ、手放すならそれと引き換えに何を持っていくのかを決めてからのほうが、確実に有利です。

新卒カードって、そんなに大きいの?

できない前提で教えてもらえるのは、あのときだけだったよ
スキルのない中途は、思っているより雇われにくい
ここは厳しい話ですが、知っておいたほうがいい部分です。
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、事業所が転職者を採用した理由として多いのは「経験を活かし即戦力になるため」「専門知識・技能があるため」です。専門的・技術的職業に絞って見ても、この2つが採用理由の上位に並びます。
CEはまさにこの「専門的・技術的職業」です。だから中途の面接で聞かれるのは、ほぼこの一点に集約されます。
「うちに来たら、何ができますか」
この問いに答える材料は、資格ではなく実務でしか手に入りません。免許は持っていて当たり前で、そこから先の差が見られます。
- 穿刺・返血を任されていた件数と範囲
- 透析装置のトラブル対応をどこまで一人でやれるか
- プライミングや準備の段取り、時間当たりの処理能力
- 機器管理、点検、業者対応の経験
- 手術室・ICU・心カテなど、透析以外の担当範囲
1年目で辞めると、この欄がほぼ空欄のまま面接に行くことになります。しかも比較される相手は、同じ求人に応募してきた3年目・5年目のCEです。ポテンシャルで採ってくれる施設もありますが、選べる側にはなれません。
「今の職場がつらいから辞める」は動機として自然ですが、それだけで動くと条件の悪い職場から、別の条件の悪い職場へ移るだけになりかねません。
- 中途採用の入口は「経験」と「専門知識」
- 1年目で辞めると、その欄が空欄のまま面接に行くことになる
- 辞めるなら、持っていける材料を作ってからのほうが選べる側になれる
僕が選んだのは「辞める前に2年、スキルを積む」だった
オリエンテーションで辞めたくなった僕がやったのは、転職を前提にして、2年ほどスキルの習得に集中することでした。
辞めたい気持ちを我慢して耐えた、という感覚ではありません。「どうせ辞めるなら、次で選ばれる側になってから辞めよう」と考えると、目の前の業務の意味が変わりました。今日の失敗も、次の面接で話せる材料になります。
意識していたのは、この3つです。
- 一人でやれる範囲を増やす:先輩を呼ばずに終わらせられる業務を、ひとつずつ増やしていく
- イレギュラーに立ち会う:トラブルやアラームの場面から逃げない。ここでしか経験は増えません
- 担当を広げる:頼まれた仕事は基本的に受ける。経験の幅がそのまま求人の選択肢になります
その結果、転職活動のときには「何ができるか」を具体的に話せる状態になっていました。同じ理屈で、異業種転職を検討したときも、最終的には自分の手札を見て判断しています(異業種転職をやめた理由にまとめています)。
1年目の今できるのは、辞めるか辞めないかの二択ではなく、「辞められる状態を作る」という第三の選択肢です。実際に辞めるかどうかは、そのあとで決めればいい話です。
臨床工学技士1年目を乗り越えるために効いたこと
精神論ではなく、実際に負荷が下がるやり方を挙げます。
- メモを「手順」ではなく「つまずき」で書く:教わったことをそのまま写すより、自分が詰まった場面と、そのときの対処を残すほうが後で効きます
- 質問を型にする:「〇〇を△△と理解しているのですが、合っていますか」の形にすると、忙しい先輩でも数秒で答えられます。聞くハードルが下がります
- 比較対象を昨日の自分にする:先輩と比べると一生勝てません。3か月前の自分と比べると、必ず進んでいます
- できなかったことを毎日1つだけ記録する:週末に見返すと、同じつまずきが繰り返されているか、新しい段階に来ているかが分かります
- 職場の外に居場所を作る:仕事が世界のすべてになると、うまくいかない日に逃げ場がなくなります
- 情報だけは集めておく:他院の給与や教育体制を知っておくと、「ここしかない」という思い込みが外れて気持ちが軽くなります
正直に言うと、1年目の僕は仕事とプライベートの時間の使い方に慣れるだけで精いっぱいで、ここに挙げたことはほとんど実践できていませんでした。ただ、副業には興味があったので、自宅の不用品を売ることは続けていました。買った洋服は着られるうちに着て、値が付くうちに手放す。そうやってお金を回すうちに、仕入れて売るという商売の基本を何となく身につけていたと思います。
今は社会人サークルや趣味の友人もできました。職場の外に居場所が複数あるおかげで、仕事の浮き沈みに振り回されにくくなっています。
5年目になって思うこと
5年目の今、1年目の自分に言えることがあるとすれば、「そのつらさは実力不足のサインではなく、経験を積んでいる最中の音だ」ということです。
あのとき必死に覚えた装置の操作もアラーム対応も、今は考えずに手が動きます。当時いちばん怖かった場面が、今は後輩に教える側の話題になっています。伸びている最中は、伸びていることが自分では見えません。
そして、1年目で辞めなかったことで手に入ったのは、技術だけではありませんでした。「どこでも働ける」という感覚です。この感覚があると、職場の理不尽に対して選択肢が持てます。働き方や副業を含めて、自分で決められる範囲が広がりました(臨床工学技士は勝ち組?負け組?でも触れています)。
よくある質問
1年目で辞めたら、経歴に傷がつきますか
傷という言い方は適切ではありませんが、早期離職の理由は必ず聞かれます。答えられる説明があるかどうかが分かれ目です。「つらかったから」ではなく「この環境では〇〇が学べないと判断したから」と言えるなら、マイナスにはなりにくいです。
同期と比べて自分だけできていない気がします
担当している部署や、任される業務の順番が違うだけであることがほとんどです。それに、できているように見える同期も、同じことを思っています。僕の同期もそうでした。
夜勤やオンコールがつらいです
体が慣れるまでの負荷が大きい部分です。ただ、施設によって夜勤の中身も手当も大きく違います(臨床工学技士の夜勤はきつい?で実態を書いています)。今の職場の条件が標準だと思い込まないことが大事です。
辞めたいと言い出せません
言い出せないうちは、まだ辞めどきではないことも多いです。ただし、眠れない・食べられないといった体の症状が出ている場合は別です。その場合は上司より先に、医療機関に相談してください。
まとめ
- 臨床工学技士1年目がつらいのは能力の問題ではなく、覚える量・責任・聞きづらさ・給与が同時に来る構造の問題
- 大卒の33.8%が3年以内に離職している。「医療,福祉」では40.8%。珍しいことではない
- つらさは段階的に薄れる。比較対象は先輩ではなく、3か月前の自分
- 心身の不調やハラスメントがあるなら、年数は関係なく動いていい
- キャリアとして動くなら、第二新卒として見てもらえる3年目前後がひとつの目安
- 新卒カードは「できない前提で採ってもらえる」唯一の枠。手放すなら、代わりに持っていくものを決めてから
- 中途採用は即戦力志向。「何ができますか」に答えられる材料を作ってから動くほうが選べる側になれる
- 1年目にできるのは、辞める・辞めないの二択ではなく「辞められる状態を作る」こと
今しんどいのは、あなたが弱いからではありません。2年後の自分が持っている手札は、今日の1日で少しずつ増えています。
出典
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」令和7年10月24日公表(報道発表資料)
- 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(統計情報)
- 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(調査結果)
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