臨床工学技士の告示研修を受けてきました|内容・費用・受けないとどうなるかを解説

告示研修って、受けないとまずいのかな…?費用も時間もかかるみたいだけど
医師の働き方改革をきっかけに、臨床工学技士の業務範囲が広がりました。いわゆるタスク・シフト/シェアです。
それに伴って必要になったのが、臨床工学技士の「告示研修」です。受けていないと、新しく認められた業務ができません。
僕は透析クリニックで働いていて、動脈表在化の穿刺に必要だったので実際に受講してきました。公式情報にもとづいた制度の中身と、受けてみて分かったことを書いていきます。
結論:受けなくても資格は失われないが、4つの業務ができない
先に結論からお伝えします。
- 告示研修を受けなくても、資格が失効することはない
- これまでやってきた業務は今まで通り続けられる
- ただし、法改正で追加された4つの業務は実施できない
つまり、職場が業務範囲の拡大を進めていく場合、未受講だとその担当から外れることになります。
同じ職場で、受講した人だけが新しい業務を任されます。そういう状況が起こり得ます。

受けないと、資格がなくなるわけじゃないんだ
そこは安心していい。当然資格は失効しない。
ただ、追加された4つの業務は担当できない。職場が業務拡大やタスクシフトを進めるなら、そこで差が出る。

告示研修とは|正式名称と、生まれた背景
一言でいうと、臨床工学技士の業務範囲を広げるために新設された研修です。
正式名称は「臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修」。長いので、現場では「告示研修」と呼ばれています。
きっかけは医師の働き方改革でした。医師の負担を減らすために、医師以外の職種へ業務を移す「タスク・シフト/シェア」が進められます。
その一環として臨床工学技士法が改正されました。2021年5月28日に公布、同年10月1日に施行です。
この改正で新しく認められた業務を行うには、厚生労働大臣が指定する研修の修了が必要になりました。
主催は日本臨床工学技士会。日本医師会や日本病院会などが後援しています。
受講状況は次のとおりです。
- 受講登録者:29,637人
- 修了者:27,024人
- (2026年7月末時点)
全国の臨床工学技士のかなりの割合が、すでに受け終えている計算になります。
告示研修を受けると何ができるようになるのか
法改正で追加された業務は、次の4つです。
- ① 輸液ポンプ・シリンジポンプの接続と操作、抜針・止血
- ② カテーテル治療における電気的刺激装置の操作
- ③ 鏡視下手術での内視鏡用ビデオカメラの操作
- ④ 表在化された動脈・表在静脈への接続と除去(穿刺)
ひとつずつ見ていきます。
① 輸液ポンプ・シリンジポンプの接続と操作、抜針・止血
手術室または集中治療室で、生命維持管理装置を用いて行う治療が対象です。
静脈路への輸液ポンプ・シリンジポンプの接続、薬剤を投与するための操作、投与が終了した後の抜針および止血ができるようになります。
輸液ポンプ等を接続するために静脈路を確保する行為も、この中に含まれます。
② カテーテル治療における電気的刺激装置の操作
生命維持管理装置を用いて行う心臓・血管のカテーテル治療が対象です。
身体に電気的刺激を負荷するための装置を操作できるようになります。
③ 鏡視下手術での内視鏡用ビデオカメラの操作
手術室で生命維持管理装置を用いて行う鏡視下手術が対象です。
体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラの保持と、術野の視野を確保するための操作ができるようになります。
④ 表在化された動脈・表在静脈への接続と除去(穿刺)
血液浄化装置の穿刺針などの先端部を、表在化された動脈や表在静脈へ接続する、あるいは除去することができるようになります。
従来から業務範囲だった「シャントへの接続・除去」に追加された形です。
僕の職場で実際に変わったのがここでした。

動脈表在化の穿刺って、CEがやっていいんだ?
告示研修を修了していれば業務範囲に入る。
うちは研修を受けてから、医師が患者さんに穿刺をする機会が基本的になくなった。

業務の一部をコメディカルが受け持つことで、医師の時間が空く。告示研修の目的が、そのまま現場で起きているのを実感しました。
制度の話として読むと抽象的ですが、実際に運用が変わるとインパクトは大きいです。
こうした業務範囲の拡大が待遇にどう跳ね返るのかは、[臨床工学技士の平均年収]の記事で相場とあわせて整理しています。
受けないとどうなるのか|3つの判断材料
資格そのものへの影響はありませんが、受けるかどうかを決めるときに考えておきたいことが3つあります。
① 転職の可能性があるなら受けておいて損はない
移った先が業務拡大を進めていた場合、未受講だとスタートで差がつきます。
転職そのものの進め方は[臨床工学技士におすすめの転職エージェント]でまとめています。
② 地方在住の人ほど「開催地」に注意
実技研修は、開催地がはっきり東京に偏っています。
公式に公表されている2026年度の日程は全65回。そのうち約55回が東京都大田区の会場で、地方は札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・高知・久留米・熊本・奈良で各1〜2回しかありません。
近場で開催されるタイミングがあるなら、そこを逃さないほうがいいです。交通費と宿泊費を考えると、地味に大きな差になります。
③ コア期間は2027年3月まで
この先どうなるかは現時点で分かりませんが、期限がある以上、受けるつもりなら早めに動いたほうが安全です。
なお僕の職場は規模が小さく、受講費用を何割負担するかという規定がまだありません。
今のところ自費で、負担については後々交渉するつもりです。どちらにせよ業務上必要なので、近場で開催されるうちに先に受けてしまいました。
費用はいくらかかるのか
受講料は次のとおりです。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 日臨工会員 | 38,000円 |
| 非会員 | 60,000円 |
| 実技研修を欠席した場合の再予約 | +30,000円 |
- 会員と非会員の差は22,000円
- 欠席すると再予約に+30,000円かかる
- 入会して会員価格を狙う場合、初年度は会費(年会費10,000円+入会金5,000円)でほぼ相殺される

引用:日本臨床工学技士会
僕は非会員価格での受講でした。
「入会したほうが安いのでは」と思うかもしれませんが、そう単純ではありません。
日臨工の会費は年会費10,000円+入会金5,000円。しかも入会には、先に都道府県の臨床工学技士会へ加入している必要があります。
会員と非会員の差は22,000円なので、初年度で計算するとほぼ相殺されます。継続して会員でいるつもりがあるなら検討の価値はありますが、受講料を安くする目的だけで入会するメリットは小さいです。
なお会員価格の対象は「入会費および年会費の引落口座を登録した者」とされています。申込に間に合わなければ非会員扱いになる点にも注意してください。
実技研修を欠席した場合、再予約に追加で30,000円が必要です。日程が決まったら、確実に参加できるように調整しておいたほうがいいです。
受講の対象になるのは誰か
対象者は次のとおりです。
- 2025年4月1日より前に、臨床工学技士の免許を受けた者
- 同日より前に国家試験に合格し、同日以後に免許を受けた者
それ以降に資格を取得した人は、養成課程の中で該当の教育を受けているため、この研修は不要です。
受講の流れ|申込から修了まで
大きく4ステップです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 申込 | 外部の申込サイトから |
| ② 基礎研修 | オンデマンド型のeラーニング、約20時間 |
| ③ 実技研修 | 対面形式、2日間 |
| ④ 修了 | 受講証明書の発行 |
申込みから実技研修終了までの期間は2年間とされているので、すぐに実技を受けられなくても猶予はあります。
僕の場合は5月ごろに申し込んで、8月に受講しました。おおよそ3ヶ月です。
非会員で申し込む場合は、本人確認の手続きが必要になります。会員より一手間かかるので、日程に余裕を持って申し込んでおいたほうがいいです。
基礎研修(eラーニング約20時間)のリアル
この20時間、思っているより重いです。
公式には「オンデマンド型eラーニングにより基礎的な知識を修得、約20時間」とされています。

20時間か…まとめて一気にやれば終わるかな
それはやめたほうがいい。
通勤が電車やバスなら、移動中に少しずつ進めるのが現実的だ。座学部分は繰り返し聞けるから、細切れの時間でも消化できる。

「直前にまとめて片付けよう」と考えていると、かなり厳しいです。実技研修の日程が決まってから慌てないよう、余裕を持って進めておくことをおすすめします。
実技研修2日間の中身と雰囲気
公式情報では、対面式で2人1組になり、模擬医療機器等を用いて実技を修得する、2日間の研修です。ここからは実際の様子を書きます。
会場の規模
会場によりますが、僕が参加した回は120名近くが集まっていました。想像していたより大人数です。
指導の体制
各講義、講師1名に加えて、周囲に複数名のスタッフが配置されていました。分からないところがあれば、近くのスタッフがその場で教えてくれます。
サポートはしっかりしていて、置いていかれる感じはありませんでした。
実際に使った物品
- 滅菌手袋、滅菌ガウン
- 内視鏡カメラの保持練習用ツール
- 模擬肝臓
- 穿刺練習用の模擬血管
清潔操作やガウンの着脱も実際に行います。
難しかったこと
業務で使わない内視鏡のカメラ操作が、かなり難しく感じました。
透析業務が中心だと、内視鏡に触れる機会がまずありません。手元の感覚と画面の動きが一致せず、視野を保つだけで精一杯でした。
普段カテ室や手術室に入っている人なら違うのかもしれませんが、自分の担当領域から離れた手技はやはり難易度が上がります。
持ち物・服装

持ち物って、何がいるんだろう
受講票と筆記用具、それと汚れてもいい服。
あと2日目の昼食も持っていったほうがいい。休憩は40分あるけど、近くに店が見当たらなかった。

- 受講票
- 筆記用具(忘れても貸してもらえます)
- 汚れてもいい服
- 2日目のみ昼食(持参が安全)
- 薄手の上着(空調対策)
服装は重要です。手袋のパウダーや模擬血液で汚れる可能性があります。きれいめの服で行くと気を使うことになるので、汚れても問題ない格好がいいです。
また、マスクは受付時にもらえました。
昼食と休憩
ここは事前に知っておいたほうが安心して研修に臨めます。
- 1日目:12:20開始〜19:00終了。昼休憩の枠はなし(休憩は10分×2)
- 2日目:9:20開始〜14:45終了。昼休憩は40分
1日目は午後からのスタートなので、昼食は来る前に済ませておけば問題ありません。
問題は2日目です。休憩時間内に行ける範囲に、開いている飲食店が見当たりませんでした。僕は1日目にそれを確認していたので、2日目はおにぎりを買って持参しました。
遅刻厳禁の研修ですし、40分で店を探して戻ってくるのは現実的ではありません。2日目の昼食は持参するのが安全です。
空調
夏の開催ということもあり、空調がかなり効いていて寒かったです。薄手の上着など、体温調整できるものを持っていくといいと思います。
受講してみて感じたこと
正直なところ、申し込むまでは腰が重かったです。費用も時間もかかりますし、eラーニングの20時間を思うと後回しにしたくなります。
それでも、重い腰を上げて行ってよかったというのが率直な感想です。
実際に業務が変わりました。動脈表在化の穿刺を担当できるようになり、医師は穿刺業務を行わなくなりました。
制度の説明を読むだけでは分からなかった部分が、受けたことで腑に落ちました。
もうひとつ思ったのは、これが東京でしか開催されなくなっていたら、間違いなく行かなかっただろうということです。
近場で開催されるという条件がそろったから動けました。逆に言えば、地方に住んでいる人ほど「開催地が近いタイミング」が、そのまま受講できるかどうかを決めてしまいます。
日程が出たら、まず開催地を確認してほしいです。
よくある質問
Q. 費用はいくらですか?
日臨工会員は38,000円、非会員は60,000円です。実技研修を欠席した場合、再予約に追加で30,000円かかります。
Q. 誰が受講できますか?
2025年4月1日より前に臨床工学技士の免許を受けた方などが対象です。
Q. いつまでに受ければいいですか?
研修のコア期間は2027年3月までとされています。申込みから実技研修終了までは2年間の猶予があります。
Q. 受けないと資格はどうなりますか?
資格が失効することはありません。ただし、法改正で追加された4つの業務は実施できません。
Q. 実技研修を欠席したらどうなりますか?
再予約が可能ですが、追加で30,000円が必要になります。
Q. 転職のときに有利になりますか?
今のところ「受講済みが条件」という求人は聞いたことがありません。ただ、業務拡大を進めている病院であれば、今後は有利に働く場面が出てくるはずです。
まとめ|受けるつもりなら早めに動く
告示研修について、要点を整理します。
- 正式名称は「臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修」
- 受けなくても資格は失われないが、追加された4業務は実施できない
- 費用は会員38,000円・非会員60,000円
- 基礎研修(eラーニング約20時間)+実技研修(2日間)
- コア期間は2027年3月まで
- 実技の開催地は限られるので、近場で開催されるタイミングを逃さない
僕自身、受講してから動脈表在化の穿刺を担当するようになり、医師の負担が実際に減るのを目の当たりにしました。
制度としてのタスク・シフトが、現場の運用として動き始めているのを感じます。
業務範囲が広がるということは、臨床工学技士に求められる役割が増えるということでもあります。期限があるものなので、受けるつもりがあるなら早めに動いておくのがいいと思います。
迷っているなら、まず開催地と日程を確認するところからでいい。
近場で開催されるタイミングは、そう何度も来ない。

業務範囲の拡大が年収にどう影響するかは[臨床工学技士の平均年収と給料アップの方法]に、この資格職の将来性については[臨床工学技士は勝ち組か]でまとめています。
出典:公益社団法人 日本臨床工学技士会「臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修」/研修の開催概要・実技研修のタイムテーブル・実技研修の日程
